シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

決められない患者たち ジェローム・グループマン/パメラ・ハーツバンド著

日本語版の書名には納得がいかなかった本。
原題:Your Medical Mind:How to decide what is right for you    それはさておき…

ある治療を受けるのか、受けないのか、
治療を受ける場合、選択肢が複数あるならどれを選ぶのか
  ・・・風邪を引いて市販薬を飲むかどうかのレベルから、がんの治療を受けるかまで、緊急度や生死や予後に関わる度合いも違うので、一括りには出来ませんが、「その人にとっての”正しい選択”」が難しいことが多いように思います。

この本で扱われていたのは、
患者自身の価値観、同じデータの解釈の仕方の違い、
主治医との相性、医師が勧める治療法に偏りはないのか、
予後の予測が難しい時にどうやって選ぶのか、
”本人の意思の尊重”はどうやるのか―元気な時に病気の時の自分がどう考えるかを想像するのは至難の業で、元気な時とは違う気持ちになることも多いのに、元気な時に書いた「リビングウィル」に従うのが本当に本人の意思を尊重したことになるのか?  などなど。

具体的な事例も織り交ぜてあって、「自分ならどうするかな・・・」と思いながら読みました。

私の場合は、「出来るだけ医療を受けたい・受けたくない」よりも、「納得が必要」が大きいようです。
納得するために、情報(データ)も欲しいし、実際に現場で他の患者さんの経過を見てきた医師はもちろん、病気によっては当事者の話も聞きたい。
自分が集めた情報に偏りがないかとか、信頼できるのかとかもよく検証したい。
「患者 n=1」として医療を受けられるという実感と安心感がある場所でなら、厳しい予後の話も聞きたいかな…。
あの実家暮らしでの体験から、不当に見捨てられて野垂れ死にするんだろうな…という予感がないなら、厳しい余命宣告を受けても、絶望して、数日で急変して死んでしまうとかはない気がします。
「生存許可証がない」のが前提にあることの数少ない強みかもしれない。言ってて哀しくなりますけど。

著者も時間的に可能なら、重要な決断はセカンドオピニオンを聞いてからにした方がいいと勧めていますが、私もそう思います。
わんこの時も、相談する獣医さんそれぞれの「自分のおすすめ治療」は違いました。
自分なりの答えが出るまで色々なタイプの専門家や経験者の話を聞くと、徐々に考えがまとまりました。「Aを選ぶとBになる」のように結果が明確でない場合は、はっきり理論的に説明できなくても、「自分は何となくこうするのがいいと思う」が見えるまで、色々な情報・人にあたるのには意味があると感じます。



この本で勧めているのは、こんな感じでした。

日頃から自分の価値観を確かめておくこと
  -自分がどの程度自立性と主導権を発揮して意思決定をしたいのか

”情報の解釈の仕方”を学んでおくこと
 この本では、「この治療で35%の人が治る」には希望に満ちた響きがあるが、「この治療を受けても65%は死ぬ」と聞くと悲観的に聞こえる…なので、情報をひっくり返して両面から見ることが必要、と言っていて、その通りだと思いました。

データの数値(治療効果や副作用発言率など治療の利益とリスクの情報)を多く集めた上で、体験者の声も聞くなどして決めること

自分に合う医師を見つけること


自分の事、家族の事なら、まぁ、そうするだろうな~な感じです。
急病でその場で重大決断をしなくてはならないとかなると、また別の話になりますが…。

仕事で出会う患者さんたちはどうやって決めているのかな。
ひとりひとりの価値観にまで踏み込んで話をすることもないのでよく分かりません。
「薬局に来ている」時点で、何かしらの治療を受ける意思はある、という事なのでしょうが。