シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

薬のやめどき 長尾和宏著

書名通りの内容でした。

以前読んだ治療法選択の自己決定についての本でも思いましたが、まずは手持ちの情報の範囲で自分のことは自分で考えてみることが大切、とはいえ、一般の患者さんにはいくつもハードルがあるな~と思いました。

・医療や薬についての知識不足・情報収集のノウハウ不足

・いわゆる”標準的な治療法”も次々変わる現実=
    今の自分の身体にとって、どうするのが一番いいか(治療を受ける・受けないも含めて)は
    本当は誰にも分からない。
    ”科学的根拠”も、確率がある程度正確に割り出されている、とまでしか言えない
 このことを踏まえて考えられるのか?実際はあまりにもあやふやなのです。

・医療者側の問題 
  患者からの疑問に的確に答えるものを持っている医療者がどれだけいるのか、正直心もとない。
  「(勉強不足で)分かりません」、「それは自分で決めることですよ」、「私には判断できません」など、
  正直に患者に言える医療者も少ないように感じます。
  訴訟リスクまで考えたら、当然の反応と言えなくもないですが・・・。

  医療者側の視点で、答えが変わる。
  延命第一か、生活の質優先か、内容はどうであれ患者の意向優先か、など。

自分の考えはこんな感じですが、さて、著者はどう言っているのかな?と興味津々で読みました。
前半は、病気ごとの薬のやめどき論、後半は日本の医療と薬の問題点や、著者の意見などでした。


「薬は全部だめ」とか、「〇歳になったら、緩和ケア以外の薬は一切不要」とか、そういう極論はなく、「やめどき」についても、今は現場の隅にいる自分が読んでも納得できる話が多かったです。
というか、「えっ、現実はそんなにひどいの?」とびっくりな話もちらほら…。

著者の主張する薬との付き合い方の基本は、こんな感じ。
・自分で勝手に止めない
・納得するまで医師と相談する
・副作用や不具合が出たらすぐに相談する
・できるだけ”かかりつけ医”に一元化する
・まずは6種類以上の多剤併用から脱却する
・いきなりではなく、徐々に減らしながらやめる
・止めて不都合が起きたら、主治医に相談の上、いったん元に戻す

自分では、自分はある程度知識もあるし、自分で調べられるから、まぁ大丈夫かなと思っていましたが、「この薬を飲むと、心筋梗塞発作を起こす人が同じ患者さんでも30人に一人から50人に一人に減る」場合、自分は飲むのか?といった判断が出来るのか、甚だ心もとないです。
これも、自分で決めるしかないんですけど。

少なくとも自分の病気や薬については勉強する
治療法や診断基準は次々変わるので、定期的に…少なくとも数年に一度程度は…確認する
食事や日常生活などで改善できることはゆるくやる
悪化したら取り返しのつかない病気(心臓発作であの世へ、とか、脳梗塞で障害が残るとか)でなければ、少し治療を休んで体調の変化を見るのも選択肢の一つかもしれない

自分のこととして考えると、この本を読んで思ったのはこのあたりです。


医療者の端くれとして、患者さんに聞かれたらどうするかは…う~ん、難しいです。

現場では、「医師に相談してみては・・・」と言っても、「先生には言いにくいからいい」な患者さんも多いです。自分で言える患者さんは薬局で相談はしないのでしょう。
でも、「結果は患者さんだけが引き受けている」のですよ・・・
どこまで踏み込むかの距離の取り方は、いつまで経っても試行錯誤です。