いつ殺されるかも分からない理不尽な状況下で、どう生き延びたのか、知りたいのだと思います。
著者は医師で、収容所内でも妻の所在が分かっており、時々は会って話すことも出来た(それにはもちろん危険が伴うわけですが)環境という、強制収容所では珍しいケース。
通読して思ったのは、生死を分けるのはちょっとした偶然の重なりだったり、本人の努力だったりで、解明は出来ないんだな、ということ。
本編は、著者は収容所に残り、妻はソ連軍接近で撤退する「死の行進」で収容所を出て行方知れずの状態の場面で終わります。
著者は解放後、妻と再会し結婚生活を再開できたけれど、お互いの心の傷は深く、12年後に離婚したそうです。著者はユダヤ人ではない人と再婚。この妻はその後どうしたのだろう・・・。
自分の心の傷が深く、血を流している状態の時、似た傷を負って苦しんている人とずっと一緒にいるのは、互いに苦しい。心の傷とは関係ない世界の人といて、その人にサポートしてもらえたら、傷も癒えやすいのかも・・・と想像したりしました。
著者は、医師としてトラウマの研究なども続けたそうですが、亡くなる直前は、強制収容所のトラウマが再び強く蘇り苦しんだとか。
沖縄戦経験者が、高齢になり、死を意識する今になって、戦争トラウマに再び苦しんでいるケースが多いと以前聞きました。 トラウマって、何なのだろう? 改めて考えさせられます。