シンプルライフへの遠い道

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ピンク・トライアングルの男たち ハインツ・ヘーガー著

副題:ナチ強制収容所を生き残ったあるゲイの記録

ナチス強制収容所は、ユダヤ人だけでなく、ジプシーや捕虜、政治犯なども収容されていたのは知っていましたが、男性同性愛者も収容され、ピンクの印をつけられていたとは知りませんでした(収容者は属性によって違う色の印を服に付けられていた)

 

ゲイは他の収容者たちからもさげすまれ、過酷な労働をさせられたり、他のカテゴリーの人たちよりさらに悲惨な拷問にあったりしていたそうです。

ゲイの収容者がどういう扱いを受けたかなどの体験談は殆ど残っていないそうです。

 

この本では、一市民として暮らしていた著者が、同性愛だとばれて収容され、経験したことの手記です。

 

世界は理不尽なことも多い(収容所ではほとんどが理不尽)から、自分の目的を定めて、ある程度は手段選ばす、プライド捨てるって必要なんだな・・・が、今、夫退職問題で揺れる私が一番感じたことです。

著者は生き残るために、カポの愛人になって食料を手に入れ、楽な労働にまわしてもらったりしたそうです。

そういうことはしたくないから、死が運命なら死ぬ、というのもその人の選択の一つだし、著者は若くて(おそらくハンサムだった)愛人になる選択肢があったけど、殆どの人は選べないし・・・。

 

収容所内の悲惨な待遇などは、他の本でも読んで情報は持っていたので、「あぁ、やっぱりこんなだったのか・・・酷すぎる」でしたが、何とか生き残って故郷に帰ったら、父親は「ゲイの父親」への世間の風当たりなどに耐えかねて自殺していて、著者自身も、ゲイだと知れ渡っていたため、仕事にはつけたものの、ひっそりと暮らすしかなく、やるせない気持ちでいることが、何だかすごく切なく、哀しかったです。

・・・文字にすると陳腐ですけど。本当に世の理不尽が少しでも減るようにと願ってやみません。

こういいながら、自分のなかにも驕りや差別意識があることも、何かの拍子に表に出かねないことも自覚しているので、なかなか厄介ですが・・・が、他者に嫌な思いをさせたり、理不尽な抑圧に加担することが少しでも減れば(皆がそうすれば)、世の中、ちょっぴりでも生きやすくなるはず、とは思っていたいです。