シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

逆境に生きる子たち メグ・ジェイ著

副題:トラウマと回復の心理学

「同じ道を行く仲間たちの半生」と、虐待を含めた逆境体験の影響の研究結果を織り交ぜた、分かりやすくてとてもいい本です。
虐待・逆境体験の影響がどう出るのか程よく詳しく、程よく簡潔にまとめてあるので、「虐待などの影響ってどういうことが出てくるの?」と思う人にはお勧めの1冊です。

この本では、「様々な困難の中で育ちながら、人並み以上の社会的成功を収める人たち」を「スーパーノーマル」と呼んでいます。
そういう人たちは、きっと生き延びる中で、何か私にも参考になるノウハウを生み出してきたに違いないと、知恵を求めてこの本を読みました。

が、「傍から見ると人並み以上に成功し、幸せを手に入れたように見えるスーパーノーマル」も、内面の苦しさは続いていて、”目標にしたくなる先を行く仲間だ”と思いたくなる人は残念ながら見当たりませんでした。

内面の苦しさが、一番苦しい時を10とすると、今は平均6くらいに減ったかもしれないけど、これからも減っていく望みは持てているのかもしれないけど、でも、苦しさが平均3に減ったわけじゃないし、「ほとんどの時は心穏やか」でもないのかな…と感じました。


この本では虐待などの逆境体験の悪影響だけでなく、レジリエンス(回復力?)として働く部分、スーパーノーマルを成功へと導く要素の説明も多いです。

私も”平均以上の能力”がないわけじゃないです。
変化などに気づきやすい。常に周囲に注意を広げている(らしい)。人が複数集まっている場に少しいるだけで、おおよその力関係を空気感で把握できる(それは割と正確)・・・など。
職場で、全く違う作業をしている時、別の人が私の隣に置いてある道具を使おうとしていると、何も言われなくても渡してあげるとか…私にとっては、”別の人”の行動意図を感知するのも、その人にとってはとりにくい場所に目的の物があって、私ならすぐに取れるから取ってあげよう(そうすることで自分の作業も邪魔されないし)…と反応するのは反射のようなものなのですが、どうやら多くの人にとっては違うらしいです。
他の事をしながら、聞くとはなしに同僚同士の話を聞いていて、必要なら何かする・言うのも、同僚の作業動向を見て、何も言われなくても場所を譲ったり、片付けたりの準備を先回りしてやるのも得意です。
(職場がかなり狭いから、ですが)
こうやって気をまわしていても、自分の仕事がお留守になることはありません。
多くの人は気づかないし、気づこうと気を張るとメインの仕事がお留守になったり、でスムーズにできないらしいです。
生き延びるために、何かに集中している時でも、常に周囲に警戒網を張り巡らせているようです。疲れ果てる一因です。

この能力は、子供時代に生き延びる(親からのあざけりなどを防ぐ、先生にとっての”いい子”でいる)のには効果があったのでしょうが、今の私の幸福度を上げるのに貢献してくれるのかは甚だ疑問。
まぁ、職場で”便利な人”、”気を遣ってくれる(わりといい)人”扱いされるメリット(?)、”仕事上の重要事項を聞き逃さない→仕事での失敗が減る”はありますが。
「諦めずにやり遂げる(誰も代わりに尻拭いしてくれないから)」のも”平均以上”かも。


この本では、他の能力(?)もたくさん紹介されていて、それがスーパーノーマルの成功に貢献している面の説明もありますが、本人たちからすると、生存戦略として無意識に身につけたものなので、その能力によっては、それを肯定的に自覚するところから始めるとなると、なかなかしんどいな…と思わなくもないです。

私の思いを代弁してくれる一節もありました。
息子を亡くした宗教指導者が、「息子を亡くしたことで、自分は人として深みを増したけど、それよりは、”そこそこの普通の人”のままでいいから、息子の父親として生きていたかった」というくだり。

私は自分がACだと気付いてから、徐々に物事を深く考えるようにもなったし、多分、自分とは全く違う立場や考えの人にも寛容になったし、そういう意味では”賢く”なったとは思います。
でも、親に愛されて育って、自分は生きていていいんだ、ここにいていいんだという感覚を当たり前に持って、世界に疑問を持って悩むこともあまりなく、”自分が普通”と思い込んでいることにも無自覚でいられる一市民でいたかったです。