シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

身体知性 佐藤友亮著

副題:医師が見つけた身体と感情の深いつながり
著者は医師・合気道

言葉に出来ない「直感」による判断や、無意識などに興味があって読みました。
もともと、私個人は心と身体は一つ…上手く言えませんが、一緒でもあり、別々でもあるものと捉えているので、身体知性という考え方は、日頃自分が感じていることや、他の本などで見聞きしたことが別の語りでまとめてある感じで、抵抗なく読めました。


内容は、西洋医学の体の捉え方、医師の診断時の身体知性の影響、身体知性について、ゾーン・フロー体験、オープンダイアローグ、べてるの家、哲学者・武道家内田樹さんとの対談 など盛りだくさんでした。

実世界での合理的判断は知識と論理的推論だけでは行えず、身体感覚的判断(”何となく”AではなくBにする…というような)が必要。特に、結婚や仕事を決めるなど、どれだけ論理的に考えて選んでも結末が不確かなことを決める場合、情動と感情が役に立つのだそうです。
それはそうですね。

私の理解では、ある経験をしたとき(選択をするとき)、それに関連するこれまでの体験やその時の感情を(無意識に)思い出すことで、よりよい判断・決断ができる、ということのようです。

わんこの飼い主仲間との通説とも通じる部分です。
獣医さんも、家族も、「大丈夫、軽症」と言うけど、いや、何か違う、何かがおかしい(でも、言葉では説明できない)と自分(メインのわんこ世話人)が感じている時、大抵の場合、自分の勘が当たっている、というものです。
自分が、「何かがおかしい」と感じる場合、これまでの情報の集積から感じるわけで、それはわんこの一番近くで沢山の情報を集積してきた自分の勘が、一番正解に近いのは、ある意味当たり前なのです。
評判のいい獣医さんは、こういう飼い主さんの勘から来る訴えを退けず、「では、もう一歩踏み込んで調べてみましょう」と対応してくれる人のような気がします。飼い主の勘違いだったら、それはそれでいいのですから。
この本を読んで、「何となくやばい感じがする」とか、「一見難しくて無理そうだけど、何かが”行け”と言っている」と感じる時は、その声に従えばいいんだな、と思えました。


ダマシオのソマティック・マーカー仮説(SM仮説)とは、「身体が受け入れた情報に基づく情動と感情が、人間の決断に大きな影響を及ぼす」という考え方で、SM仮説から「身体を丁寧に扱うことが、社会的判断能力を高め、それが生活の充実につながる」という考えを導き出せると著者は述べています。
疲れていたり、大きく気持ちが揺れ動いているときは、ろくな判断できないと考えれば、「それはそうですね」になります。
なので、今の自分の身体・感情・情動を一歩下がって観察して、”今は状態が悪いから賢明な判断は出来そうにないな”など把握することも大事、というのも、納得です。
というか、実生活で時々感じることを理論的に説明しようとするとこうなるのかな、と思いました。


内田さんとの対談は表現も分かりやすくて好きでした。
時間意識の話が印象的でした。
上手くまとめられませんが、時間意識は人間の倫理性にも深いかかわりがあって、「道徳的であることとは、幅の広い時間意識を持つことだ」、「主観的時間として長寿でなければ、生きている意味がない」という内田さんの話も新鮮でした。

気になったのは…
・100歳を超す超高齢者の共通点は自分の身体の内側をモニターする能力が非常に高い。
 病気にならないように身体を調整する能力が高いのだろう。
 
・武道とは、一言で尽くせば「いるべきときに、いるべきところにいて、なすべきことをなす」ということ。
 この「呼ぶ声」を聴くのは、身体的なもの。




この本の内容を今の自分に役立てようとすると、一歩離れて自分を観察する視点を忘れないこと、になるでしょうか。

この本で出てきたダマシオさんの本は読んでみたいです。