シンプルライフへの遠い道

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男が痴漢になる理由  斉藤章佳著

日本で初の痴漢についての専門的に書かれた本だそうです。確かに見たことなかったです。
著者は痴漢(性依存症)だけでなく、依存症全般の治療をしている精神保健福祉士社会福祉士
12年にわたる痴漢加害者の「再犯防止プログラム」の中で見えてきたことがまとめてある本。

これまでも、依存症、DVや虐待・ハラスメント加害者の情報に接してきたので、「痴漢常習者はこういう人なんだろうな」な私のイメージ、ほぼそのままでした。

自己肯定感が低かったり、劣等感や”こうあらねば”という思い込みのプレッシャーなどを抱えている人が、自分より弱いものを支配したり押さえつけたりすることで自己を取り戻すためにやる。
それが性的な行動になるということは、性欲が強い人もいるのだろうけど、それよりは支配欲求や生きづらさの問題の方が大きいのだろう。

というイメージでしたが、この本での説明も、ほぼこんな感じでした。

加害者は被害者のこと(特に気持ち)を全く考えない(考える思考回路がない)。時に相手のため・相手が望んでいることをやっていると思っている。
現実を歪めて見ているので、罪悪感や自己嫌悪感には結びつかない。
他者から指摘されても、余程の事(社会的地位を失う、一番大事な人間関係を失うなどの危機的状況)がないと自分が酷いことをしていることを認識しようと試みすらしない。

この辺も、DV・虐待・ハラスメントとほぼ同じ。

痴漢常習者は何度も逮捕されることが多いそうでそのための税金からの経費(1000万単位でかかる)を考えても(被害者の心の傷を考えれば、もちろんのこと)、再犯防止プログラムへの参加に法的強制力を持たせることが被害拡大防止に必要と著者は言っていますが、私も全く同感です。



私自身の参考になったのは、「再犯防止プログラム」。買い物依存に使えそう。(同じ依存症だからある意味当たり前?)
事前に、「なりたい自分」のイメージをはっきりさせる、サポートしてくれる人の確保
     「発作」が起こりやすい状況を整理して、その対処法を用意しておく
     「いよいよやばいぞ」な時の状況・予兆を整理して、対処法も用意しておく
                                             これを定期的に更新

まとめると陳腐かもしれませんが、効果ありそう、と自分でも思います。
疲れがたまった時は危ない、セールは危険、「ご褒美」と言い訳を考え始めたら黄色信号などは自覚はありましたが、一度整理して一枚の紙にまとめておこうと思いました。まずいな、と思ったら、それを取り出して見よう。
本に「サンプル」が載っていて分かりやすかったです。


もう一つ参考になったのは、「治療期間」
「再犯防止プログラム」は再犯リスクなども考慮して組まれるそうですが、「最低3年」だそうです。
人が変わるのは簡単じゃない。

自分が親との関係整理に10年近くかかったのも、必要な時間だったんだな~と改めて思えました。
現実(あれは虐待だった。そのせいで自分の生きづらさがある)を受け入れるのに1年くらい?
親に対して怒りつつも、何とか関係を継続できないか?という執着を手放すのに、
親が”我慢すれば付き合える程度”に変わってくれないかな・・・という虚しい希望を手放すのに 数年。
絶縁することへの罪悪感が薄らぐのに更に数年。
その間に、自分を生きづらくする自滅の思考・行動パターンから少しでも自由になるように試行錯誤でした。これは今も続いています。


「親は変わらないから、付き合い再開もない」もこの本を読んで再確認。
私の親の認知も歪んでいます。それを、「老い先が心配だから、使えそうな娘の機嫌を取る技術を身につけて己の利益を図ろう」という形ですら変わる気はない。お互いに分かり合おうとか、心を通わせようという発想はもちろん皆無。親にとって私は支配対象でしかないから。
変わるのはすごく大変です。
まず、どういう形であれ「今の自分に問題があるから変化が必要」と認識しなくてはいけません。
ここが一番大変。
親は、そういうしんどい思いをするくらいなら、娘(私)とは絶縁のまま終わっていいと無意識では決断しているのだと思います。私にとっては「私ってその程度の存在(苦しい思いをするくらいなら切り捨ててしまう相手)なのね・・・」という哀しい現実ですが、仕方ないです。


私にとっては分かりやすく、自分自身の参考にもなる良書でした。