シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

傾聴力  大津秀一著

書名は  1000人の患者を看取った医師が実践している傾聴力  です。

著者は緩和ケア医なので、自分自身の死を意識して苦悩している人、死を迎えつつある人に寄り添っている家族などへの支援の一つとしての「傾聴」がメインでした。
細かい技法より、傾聴する場合の心得にページが割かれていて、私はセルフカウンセリングガイドな感じで読みました。

大きな悩み・苦しみを抱えている人の話を聞いても、上手く返す言葉が見つからない時は、ただ黙ってそこにいるだけでもいい、というのはほっとできるアドバイスでした。
確かに、相手の心情を想像してみても、あまりにも自分の経験の範囲から離れていて、言葉が出ない時があります。そういう時は、「言葉がないです」でいい。
逆の立場なら、うわべをなでるだけの言葉を連ねられるより、黙って一緒にいてくれるだけの方がいいかも。

苦悩を抱える人に寄り添うとか、逆に自分が辛い時援助を求めるときって、やり方や加減が難しいと思ってしまいますが、ゆる~く、思いやりを持って、相手を尊重して・・・という基本を大事にすれば、大失敗してこじれる危険性は低いのかな、と思いました。実行は言うほど簡単ではないですが、頭の隅に”心得”があるだけでも違う気がします。


話を聞くことから撤退したいときのアドバイスはとても参考になりました。
相手に寄りかかられて、精神的につぶれるのは嫌だとか、
話を聞いてあげたいけど、自分の生活もあるし・・・とか、聴くこと自体を避けたくなる心配事がありますが、気を付けることはこの4つだそうです。

・頑張り過ぎない(多人数で援助する)
・かける労力と時間は事前に決めておく(途中で見放す結果にならないように、線引きも必要)
「うつ」などの病気を感じた時は専門家につなぐ
苦悩者が「パーソナリティ障害(人格障害)」の場合は深追いしない
  人格障害者は、一般人には(専門家でも)対応が難しすぎて、こちらの人間関係を破壊されたり、
  精神的に消耗させられたりするので、関わり過ぎない方がいい。

これはそうだ!!と強く自分に言い聞かせました。
頭に浮かんだのはもちろん自分の両親。
相手はどう考えているんだろう? と考えること自体が、病むことへの入り口。
自分の利益優先の人はこう考えるのかな?
自分の問題に直面したくなくて、こんな風な言動なのかな?
   ・・・多くの人には、理解への手掛かりになるこういう問いも、人格障害者相手だと、
     自分が混乱するだけ。

他にも、「困った同僚」の顔が何人か浮かびましたが・・・共通しているのが、「こういう言動をしたら、後々自分に不利益になる」ことは考えもせずに生きている(ように見える)こと。実際に望まない状況を招いておきながら、相手が悪いと非難・攻撃する人も多かったです。「いじめられている」的に被害者妄想に逃げる人もいるし。
「単なる個性」を通り過ぎて、「人格障害」と言われるのは、毒気が強く、理解が難しく、一般人には対応不能なことが多いからだと思います。関わらないのが一番!

傾聴や困難者への寄り添いとはかけ離れますが、私の場合は、「この人は徹底的に合わない、ダメだ」と思った人からは、自分を守るために離れなくてはいけないことをしっかり学んで、実践できるようにならないと、人間関係の中で生きるのがしんどいままなんだ、ということを、この本を読んで強く思いました。

解決が難しい問題(病気など)を抱えている人に寄り添う時の参考になるいい本だと思います。