シンプルライフへの遠い道

心穏やかな暮らしを目指して奮闘中

人間の死に方  久坂部羊著

「医者だった父の、多くを望まない最期」という副題がついています。

著者のお父さんは、自分が受ける医療に関してはかなり平均からずれていて、糖尿病でも放置→インシュリンを使うようになっても、血糖値を計らず、その時の体感で量を決め注射、という具合。
結果が悪くなっても受け入れる、と覚悟していたにしても、私には無理だな~と思いながら、面白く読ませていただきました。

高齢者にあれこれ医療介入して、却ってストレスが溜まったり、体調が悪くなったり、苦しみが増えたりってことがあるのかは、私は自分で見聞きしたことがないのでわかりませんが、高齢わんこの旅立ちの様子を聞くと、苦痛を取り除くための最低限の治療にとどめた方が、わんこも楽に旅立てるのかもしれない、と思う時があります。
実際に、どの程度の苦痛を感じていたか、わんこには聞けないので、確認は出来ませんが・・・
癌などの場合でも、骨転移などの痛みが強いものは別にして、「徐々に元気はなくなったけど、数日前まで食事もして、割と普通だった」とは時々聞きます。
(長患いで苦しんだ、最後の数日~数週間は苦しそうでかわいそうだった、という話も聞きます)


この本で学んだのは、「先のことは分からない」は、終末期も同じ、ということ。
本人も家族もお別れが済んだ気になっていたのに、徐々に回復したり、認知症の症状が出たり、一か月くらい寝たきりだったのに、床ずれは出来なかったり、なんとなく、「次はこうなるのかな」という想像通りにはならないようで。
「その時出来ることをやるしかない」が正しいんだな、と改めて思いました。


孤独死についても触れていますが、
「一人だと気ままでいいけど、寂しい。
 家族がいると寂しくないけど、好き勝手には出来ない。
 自由気ままで寂しくもないというような都合のいい相手は普通いない。
 もしそうだとしたら、相手はきっと迷惑している。」
という主旨のくだりがあって、そうだよな~と思いました。
私の親はこれですね。
好き勝手やりたいけど、寂しいのは嫌。相手の迷惑も負担も考えない。
私は? 遠慮しているつもりで、実は好き勝手やっているのかもしれない(笑)


終末期の過ごし方や、選択肢がいくつもある病気の場合、こうするのが正解、というのはないので、自分の価値観を把握した上で、それに一番合っていると思った方法を選ぶのが後悔が少なそうだ、と感じました。
問題は、自分の死生観や価値観って、意外と把握するのが難しいってことです。
状況によっても変化していくし。

その時の状況を素直に受け入れるところから、幸せな旅立ちが始まるのかもしれません。